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オリジナル状態で整備箇所多数 2オーナー程度良好 HONDA BEAT 販売前メンテナンス エンジン関連各種調整
TORINO CARSのブログをご覧頂きまして誠にありがとう御座います。
先日入庫のお知らせをさせて頂きました『オリジナル状態で整備箇所多数 2オーナー程度良好 HONDA BEAT』ですが、販売前メンテナンスを実施致しましたので、作業の様子を順次ご紹介しております。
前回にエンジンルームのチェックと清掃の様子をご紹介致しましたが、点火時期が少しズレていることが確認出来ました事に加え、タペット音が少し大きいことが気になりましたので、各種調整作業を実施致しました。
※エンジンルーム確認の様子はこちら ⇒ HONDA BEAT エンジンルーム状態確認
そこで、今回は前回の続きとなる【エンジン関連各種調整編】として、エンジンが本来の性能を発揮する様に、点火時期の調整、バルブクリアランスの調整、アイドリング回転数の調整を実施致しました際の様子をご紹介致します。
まずは、点火時期の調整作業ですが、点火時期は過度に早すぎるとエンジンに重大な損傷を及ぼす『ノッキング』という異常燃焼を起こしてしまいますし、逆に遅すぎるとしっかり燃料が燃えずパワーダウンが起こってしまいますので、メーカーにおける開発ではノッキングテストなどの膨大なテストを行い、安全マージンなども考慮しながら最適な点火時期を設定しています。
BEATにおける点火時期の調整はデストリビューターの角度を変えることにより調整が可能となっており、例えば、吸排気系を効率の良いパーツに交換した場合は、ノッキング発生までに余裕が生まれますので、少し進角することでフィーリングが良くなりますが、本車両は吸排気系が完全にオリジナル状態ですので、メーカーが設定した点火時期に合わせることが一番ということになります。
ということで、本車両においては、きっちりと規定の点火時期に調整することに致しますが、繰り返しになりますが調整作業はデストリビューターの角度を変えることで調整します。
具体的な作業としましては、エンジンが十分に温まった状態でサービスカプラーを短絡させ、エンジンを回した状態でデストリビューターを固定しているボルトを緩めて、タイミングライトを用いてフライホイールの点火時期確認窓を見ながら、適切な点火時期となる様にデストリビューターの角度を調整します。
調整前は少し進角側にズレておりましたが、デストリビューターの角度を遅角側に調整して、規定点火時期となる様にします。
バッチリ規定点火時期に調整致しました。
これで、ビートのエンジンが本来の性能を発揮してくれることでしょう。
点火時期の調整は以上となりますので、続いてはバルブクリアランスの調整を実施致します。
このバルブクリアランスとは、バルブと、バルブを押し下げるロッカーアーム先端にあるタペットの間の隙間のことです。
このバルブとタペットの間にクリアランスを設けてあるのは、燃焼によりバルブが温まるとバルブが伸びるからで、冷間時に少しクリアランスを空けておいて、エンジンが完全にあったまるとバルブクリアランスが無くなる様に規定値が設けられています。
よって、規定値よりも詰まりすぎてきると温間時にバルブを突き上げてしまい圧縮漏れを起こしてしまいますし、空きすぎていると温間時でもクリアランスが空いてしまい、タペット音が『カチカチ』としてしまいます。
更に、クリアランスが過大であると、カム山バルブリフト量すべてをバルブに伝えることができず、バルブリフト量が少なくなり、本来の性能を発揮できなくなってしまいますので、バルブクリアランスも大変重要なパラメーターとなります。
通常は、走行しているうちにタペットも摩耗しバルブクリアランスは広がっていく方向となりますが、本車両においては車両の引き取り時からこのタペット音が少し大きい状態でバルブクリアランスが過大であることが容易に想像できましたので、規定値までバルブクリアランスを調整する作業を実施致しました。
では作業に入りますが、エンジンが完全に冷えた状態でヘッドカバーを外し、内部を確認します。
少し汚れたエンジンオイルにより茶色く見えますが、ヘッド本体はスラッジも少ない大変綺麗な状態で、オイルの管理が良く、オーバーヒートなども無かったことがわかります。
そして、各気筒において圧縮上死点を出してから、バルブとタペットの間にシックネスゲージを挟み込んでクリアランスを確認しますが、BEATにおけるタペットクリアランス規定値がIN側が0.13mm~0.17mm、EX側が0.23mm~0.27mmですが、調整前はIN側が0.22mm~0.25mm、EX側が0.35~0.42mmと全てのバルブにおいてクリアランスが過大な状態でした。
これではタペット音が出てもおかしくないです。
そこで、全てのバルブにおいてアジャストスクリューを回してクリアランスが規定値となる様に調整していきますが、IN側を規定値中央の0.15mm、EX側も中央値の0.25mmに調整致しました。
このクリアランス調整は感覚的なところが大きく、経験がないときちっと規定値に合わせることは難しいものですが、私は本田技研工業に在籍時にはエンジン開発も行っていましたので、このタペットクリアランス調整はお手のものです。
調整が終了しましたら、クランクを回して、クリアランスが規定値になっているかを再度確認し、ロックナットが規定締め付けトルク14N・mで締め付けられているか確認してヘッドカバーを閉じます。
もちろん、ヘッドカバーガスケット及びプラグホールパッキンは新品に交換して、サービスマニュアル通りに角部にはしっかり液体ガスケットを塗布しております。
最後に、ヘッドカバーを締め付けましたらバルブクリアランス調整作業は完了です。
調整後にエンジンを始動致しましたところ、タペット音は発生しなくなり、エンジン音が大変静かになりました。
更に、バルブが設定どおりの動きをする様になったので、特に低回転域でエンジンのフィーリングや力感も向上するはずです。
これだけでも、車の質感が大きく向上するので不思議なものです。
因みに、点火時期及びバルブクリアランスが少し規定値から外れていた理由としましては、本車両は89,406km時に某ディーラー様にて一度ピストンリングやバルブ交換などのプチOHが実施されているのですが、その際の合わせ込み不足なのかもしれません。
とにかく、これにて点火時期の調整と併せてエンジンの調子ばバッチリで、今後も気持ち良くお乗り頂けるかと存じます。
以上、バルブクリアランスの調整作業が完了致しましたので、最後にアイドリング回転数の調整を実施致します。
通常時はアイドリング規定回転数である1200r/minで安定しておりますが、空ぶかしなどの後に規定回転数を下回ることがありましたので、調整を実施致しました。
調整方法としては、エンジンが十分に暖まった状態且つ無負荷状態でEACVのカプラーを外し、アイドルスクリューバルブにてエンジン回転数が850r/minとなる様に調整します。
調整ができましたら、EACVカプラを接続した後に、ECUヒューズを抜いてECUのメモリをリセットします。
※一番上の15AのヒューズがECUヒューズです
そして、再度エンジンを始動し、無負荷状態、ヘッドライトON(ハイビーム)状態、エアコンONの状態でアイドリング回転数が規定値の1200r/minとなっていることを確認できましたら作業は完了となります。
調整作業実施後は、空ぶかし後などもアイドリング回転数がビタっと1200r/minで安定する様になりました。
これにて、エンジン関連の調整作業は全て完了ですので、メンテナンスリッドを元に戻して4本のボルトにて固定し、清掃をしておきましたトランクマットを敷いていきます。
あとはひと手間として幌を固定している6本のビスの塗装を実施した後に幌を固定してエンジンルームにおける一連の作業は完了です。
以上、ここまでエンジンルーム内の状態やプラグや補器類の状態確認及び清掃を行いました上で、点火時期調整、バルブクリアランス調整、アイドリング調整を行って参りましたが、これらは不具合とは言えないものですがエンジンが本来の性能を発揮する為には規定値にあることが望ましいものばかりです。
できる限り良い状態で、且つ本来BEATが持つ性能や乗り味を味わって頂きたいとの想いから各種調整作業を実施し規定値に合わせ込みましたので、お客様におかれましては今後も気持ち良くBEATのドライブをお楽しみ頂けるかと存じます。
次回は同じエンジン関連である【エアクリーナーケース確認編】として、エンジンの健康状態を計り知る為の一要素であるエアクリーナーケース内のブローバイガスの状態確認及びエアクリーナーエレメントの状態確認を実施致しましたのでその様子をご紹介致します。
では、失礼致します。